学生に必要なのは「恐怖」ではなく「危機感」だ
就活に前向きになるために、あえて伝えていること
私は学生に話をするとき、できるだけ「怖がらせない」ようにはしています。
でも、「安心させすぎない」ことは意識しています。
なぜか。
社会に出るというのは、やっぱりきれいごとだけでは済まないからです。
授業の中で私が学生に伝えているのは、恐怖ではありません。
危機感です。
ここを間違えると、キャリア教育はおかしくなると思っています。
脅して動かすのではない。
でも、「まあ何とかなるやろ」で流されるのも違う。
その間にある大事な感覚が、危機感です。
社会には、楽しそうに働く人と、しんどそうに働く人がいる
私は授業の中で、社会人の姿をなるべくリアルに伝えるようにしています。
楽しそうに働いている人がいます。
忙しくても、なんだか充実している人がいます。
しんどいことがあっても、自分で道を選んでいる感じのする人がいます。
その一方で、毎日がつらそうな人もいます。
不満ばかり口にしている人もいます。
「辞めたい」と言いながら、辞めることもできず、ただ年齢だけ重ねていく人もいます。
学生には、そこを見てほしいと思っています。
どうしたら、ああいう人になるのか。
どんな仕事の仕方をしてきたら、あんなふうになるのか。
逆に、ああはなりたくないと思うなら、今から何をしておくべきか。
ここを考えることが、就活のスタートだと思うんです。
業界研究や企業研究ももちろん大事です。
でも、その前に「自分はどう働く人になりたいのか」を考えないと、就活はただの内定取りゲームになってしまう。
それは、かなり危ないです。
水は低い方に流れる
学生に話すとき、私がよく思うことがあります。
水は低い方に流れる。
人も、放っておいたらそうなります。
楽な方へ行く。
今しんどくない方へ行く。
深く考えなくて済む方へ行く。
それ自体は、人として自然なことです。
でも、だからこそ意識して高みを目指さないといけない。
自分を鍛えるとか、スキルを身につけるとか、経験を積むとか。
そういうことは、放っておいても勝手には手に入りません。
「そのうち何とかなる」と思っている間に、差は開いていきます。
就職してから頑張ろう、では遅いこともあります。
社会に出てからは、待ってくれません。
だから私は、学生である今のうちから伝えたいのです。
就活は、就職先を決める作業ではない。
働く力を持った自分をつくり始める場なんだと。
ちょっと厳しい問いを、あえて投げます
学生には、ときどきこんな話をします。
「定年が近づいてきた頃、あるいは役職定年が見えてきた頃、年下の部下が自分の上司になったら、きみはどうする?」
たぶん、あまり明るい話ではありません。
わざわざ学生にそんなことを言わなくてもいい、と思う人もいるかもしれません。
でも、私はわりと大事な問いだと思っています。
社会に出たら、年齢だけで評価されるわけではありません。
長くいるだけで上に行ける時代でもない。
むしろこれからは、年下が上司になることなんて、いくらでもあるでしょう。
そのときに必要なのは、プライドではありません。
自分の中に何が残っているかです。
役職が外れたら何もない。
会社の看板がなければ通用しない。
年齢を重ねたのに、積み上がっているものがない。
そうなると、かなり苦しい。
だから学生のうちから考えてほしいのです。
自分は何を持って働く人になるのか。
何を積み上げていくのか。
環境が変わっても、自分を支えるものは何か。
これは脅しではありません。
未来の自分を助けるための問いです。
つらいまま働くのは、やっぱりしんどい
世の中には、「仕事なんてしんどいものだ」と言う人もいます。
たしかに、楽なことばかりではありません。
でも、つらいまま働き続けるのは、やっぱりしんどいんです。
しかも厄介なのは、しんどい職場にいることそのものより、そこから動けないことの方が人を苦しめるということです。
辞めたい。
でも辞められない。
環境を変えたい。
でも、自分に何ができるかわからない。
他で通用する自信がない。
こうなると、人はどんどん弱っていきます。
だから、自分にスキルや経験を持っておくことが大事なんです。
転職するためだけではありません。
今いる場所で踏ん張るためにも、自分を守るためにも必要です。
そして、それは社会人になってから急に始まる話ではない。
学生の今から、もう始まっています。
教育機関は、安心だけを配る場所ではない
教育の現場では、どうしても「不安にさせないように」という配慮が強くなります。
それはよくわかります。
必要なことでもあります。
でも、安心だけを配って終わるのは違うと私は思っています。
現実には、うまくいかないこともある。
選び方を間違えることもある。
努力不足があとで効いてくることもある。
何も積み上げてこなかったことを、社会に出てから後悔することもある。
そういう現実を、誰かがちゃんと伝えないといけない。
ただし、やり方を間違えてはいけません。
「大変だぞ」「しんどいぞ」と脅しても、学生は前向きにはなれません。
下手をすると、考えること自体をやめてしまう。
だから必要なのは、恐怖ではなく危機感です。
現実はこうだ。
でも、今から準備すれば変えられる。
だったら動こう。
そう思える伝え方が必要なんです。
就活に前向きになるために、危機感がいる
私は、就活を前向きなものにしたいと思っています。
でもそれは、「大丈夫、大丈夫」と言い続けることではありません。
むしろ逆です。
このまま何も考えずに行けば、あとで苦しくなるかもしれない。
だったら今、考えよう。
今、動こう。
今、少しでも積み上げよう。
そう思えることの方が、よほど前向きです。
危機感というのは、人を追い詰めるためのものではありません。
自分の未来に責任を持つための感覚です。
学生には、そこを持ってほしい。
就活を「受かる・落ちる」の話だけで終わらせず、
これからどう働き、どう生きるかを考える入口にしてほしい。
教育機関が本当に学生の未来を応援するなら、
安心だけでなく、適切な危機感も渡す必要がある。
私はそう思っています。