「中小企業の採用は『見極め』をやめなさい」― 人は変われる。だから“見つける採用”が必要だ
最近企業の採用担当の方からこんな相談を受けました。
「最近のニュースを見ると、採用はもっと早く動かないといけないんでしょうか?」
きっかけになったのはIT企業の大手SCSKが親会社による完全子会社化で上場廃止になるというニュースでした。こうしたニュースが出ると、企業の採用担当者の方から必ず相談を受けます。
- やはり早期選考をやらないといけないですか?
- でも大手と同じことをやる体力はありません。
- 今からでも間に合う採用のやり方はありますか?
特に従業員300人以下の企業ではこの悩みは深刻です。
- 採用担当が専任ではない
- インターンシップを何度も開催する余裕がない
- ナビサイトに大きな費用をかけられない
大手と同じ採用戦略を取るのは現実的ではありません。
では、どうすればいいのか。
まず知っておいていただきたいのは、今の就職活動は大きく二つのラウンドに分かれているということです。
今や就活は3年生のイベントだと認識してください。
第一ラウンド(3年生の夏~秋にかけて)
3年生の秋から冬にかけてインターンシップや早期選考で内定が出る学生がいます。
この段階で決まる学生は、
- 自己分析ができている
- 職種理解ができている
- 就活準備ができている
つまり、かなり完成度の高い学生です。
もちろん、こうした学生を採用できれば理想です。
しかし現実には、多くの企業がここで大手と競争することになります。
第二ラウンド(3年生の2月〜3月)
そしてもう一つの採用機会が、3年生の2月から3月にかけて始まる第二ラウンドです。早期選考で決まらなかった学生が、ここから動き始めます。
ここで重要なのは、多くの学生は能力が足りないわけではないということです。
多くの場合、問題は職種理解ができていないことです。
こんな学生がいました
ある学生の例です。
その学生は、
- 施工管理
- 営業
この二つに興味を持ち、両方のインターンシップに参加していました。
企業からの評価も良く、最終選考まで進みました。
ところが最終段階で、志望職種を事務職に変更しました。
その学生に理由を聞くと、こう答えました。
「友達に相談したら、事務にしておいたらと言われたので…」
結果は不採用。
後で企業の担当者に聞いてみると、
「施工管理か営業なら採用した可能性が高い」
という話でした。
ここで問題になるのが「自己効力感」です
心理学者アルバート・バンデューラが提唱した概念で、
「自分ならできそうだ」という感覚のことです。
これは「自信」とは少し違います。
- 自信 → 根拠がなくても持てる
- 自己効力感 → 小さな成功体験から生まれる
自己効力感が低い学生は「自分には無理かもしれない」と思ってしまい、本来向いている職種を自分で諦めてしまいます。
自己効力感が「ゼロ」の学生はいない
学生と話していると分かります。
自己効力感がないのではなく、
自信のなさが勝ってしまっている
だけのケースがほとんどです。
話を聞いていくと、
- 頑張ってきたこと
- できること
- 向いていること
は必ず出てきます。
中小企業の採用に必要なのは「見つける採用」
多くの企業の採用は見極める採用です。学歴や第一印象、スペックで判断する採用です。
大企業ならそれでも成立します。
しかし中小企業が同じことをしていては、欲しい学生には出会えません。
中小企業に必要なのは、見極める採用ではなく、見つける採用です。
そのためには、
- 面接ではなく面談
- 評価ではなくカウンセリング
が必要です。
学生の
- やってきたこと
- 強み
- 小さな成功体験
を引き出す。
そして、「君ならできると思う」と伝える。
それだけで学生の自己効力感は大きく変わります。
集団面接はおすすめしません
集団面接ではハロー効果が起きます。
一人の目立つ学生に評価が引っ張られてしまう現象です。
本来見えるはずの学生が見えなくなります。
だからこそ必要なのは、一人ひとりと向き合う面談です。
採用は「見つける仕事」
パッと見では目立たない学生でも、話を聞くと素晴らしいものを持っていることがあります。
そんな学生はたくさんいます。
だから私は、
目の前の学生を信じて向き合う採用
を大切にしています。
最後に
私は学生と向き合うとき、いつも思っています。
人は変われる。
そして人が変わるのは、小さなきっかけです。
もし面談で
「自分にもできるかもしれない」
そう思ってもらえたなら、その面談には価値があったと思います。
採用とは、人を見極める仕事ではありません。
人を見つける仕事だと、私は信じています。