就活ルール前倒しの前に考えるべきこと──「就活は3年次」で決めたほうが企業は楽になる

2026年1月28日

政府が、29卒(2029年春入社)から「6月選考解禁」という事実上形骸化していたルールを撤廃し、選考時期を前倒しする方向で調整に入ったというニュースが出た。

【政府による就活ルール変更の概要】

2025年12月26日、政府は「就職・採用活動に関する関係省庁連絡会議」において、現在の大学1年生(2029年3月卒業予定者)から、就職活動のルールを以下の通り変更する方針を固めました。

  • 選考開始時期の変更: 現行の「4年次の6月」から、「3年次の春休み期間(2月〜3月)」へ大幅に前倒し。
  • ルールの実質的な撤廃: 長年維持されてきた「4年次6月選考解禁」という指針は形骸化が著しいため、事実上撤廃し、実態に即した運用へ移行。
  • 学業への配慮: 「学業に支障のない長期休暇中」に選考を行うことを条件とし、教育環境の維持を建前とする。

出典: 内閣官房・文部科学省・厚生労働省・経済産業省「2029年度卒業・修了予定者の就職・採用活動日程に関する考え方」

方向性としては理解できる。ただ、採用の現場に立っている立場から見ると、実態よりまだ遅い、というのが正直な印象だ。

実態はすでに「3年生で決着」

現実には、27卒ですら3年生がコアターゲットになっている。
早い学生は、3年生の年内から年明けにかけて内定が出る。
そして、3年生から4年生に上がる春休みには、就活はほぼ決着している

つまり、政府が想定している「春休み前倒し」でも、実態の後追いにすぎない。

事実追認ではなく、「就活は3年生」と定めたほうがいい

ここまで実態が動いているなら、
「選考開始を少しスライドさせる」という発想ではなく、

就活は3年生のイベント
と、はっきり定めたほうがよい。

そうすれば、4年生は自由になる。
すでに単位はおおかた取得している。
研究に集中してもいいし、留学してもいい。

「3年生=就活」と決まっていれば、学生もそのつもりで動ける。
中途半端に自由化するより、よほどすっきりする。

実際には、さらに早い動きもある

採用の現場で実際に聞いた話として、
2年生の段階で「うちにおいで」と口頭で内定を出している企業もある。

これは現実に起きていることだ。

ただ、企業の採用効率という視点で考えると、
1・2年生で内定を出すのは早すぎるとも思う。

2年も先まで学生を引っ張り続けられる企業は多くない。
結果として、途中で流れる学生も増え、企業側の負担も大きくなる。

だからこそ、3年生が一番現実的だと思っている。

実態としても、
3年生の夏休み、インターンシップで出会い、
そこから選考につながっているケースが多い。

完全自由化より、「目安」は必要

大企業からは「完全自由化」を求める声もある。
だが、それは学生にも企業にも効率が悪い。

ある時期からみんなが一斉に動くから、日本の学生は就職できている。
もし完全自由化したら、

  • 卒業してから就職しようとしても就職できない学生が増える
  • 早く内定を出しても、3・4年で他社に流れる学生が増える

企業にとっても、学生にとっても不安定になる。

新卒一括採用は、日本に合った「温かい仕組み」

私は、日本の新卒一括採用を大歓迎している

理由はシンプルだ。
仕事の経験がなくても、安定的に仕事を得られるから

海外では、職歴がなければ新卒での就職は難しい。
日本の仕組みは、世の中をまだよく知らない若者にとって、実はとても温かい。

むりくりでも、みんないっぺんに就職する。
これは悪い文化ではない。

完全自由化が招くリスク

もし就活が完全に自由になったら、
つまり今の日本の就活文化がまったく無くなれば、
非正規雇用は一気に増えると思っている。

今の学生は、周りの空気を見て動く。
就職の時期がバラバラになれば、
「まだいいか」と就活をしなくなる学生が増える。

結果として、

  • とりあえず卒業
  • 若いうちはバイトで食いつなぐ

という状態に陥る人が増えることを、私は危惧している。

3月卒業、4月入社、25日に給料

3月末で卒業し、
4月1日から会社に行き、
25日には給料がもらえる。

これは、ものすごく安定した仕組みだ。

この仕組みがあるから、日本人は大きくふらふらせずに済んでいる。
これがなくなったら、もっと不安定になる人は増えると思う。

会社で働くメリットを、もう一度

就活のルールを議論している人たちは、
そもそも「就活」を良いものだと思っていない人が多いのではないか。

だからこそ、
会社で働くメリットを、もう一度見直してもいいと思っている。

やりたいことがあるなら、副業すればいい。
今は、そういう環境も整っている。

私自身、いったん就職し、会社で多くのことを教えてもらったからこそ、今がある。
もし就活の時期がなかったら、
今でも音楽の道をふらふらしていたかもしれない。

安定して働ける環境を得てから、
副業や独立を考える。
それで遅いとは思わない。