農業が広げた視野―高校生が自分の価値を積極的に考える力
猪名川甲英高等学院で驚いたこと
多くの高校生は、自分の目に見える範囲の中で仕事を選びがちです。飲食店やアパレルショップなど、自分が経験したことのある業界や身近に感じられる職業に目を向けるのは自然なことかもしれません。ですが、私が就活講座を担当している猪名川甲英高等学院の生徒たちは少し違いました。
この学校の特徴は、全員が農業実習に参加していることです。自然と向き合い、作物を育てるという体験が、生徒たちの考え方や価値観に大きな影響を与えているように感じました。彼らには、仕事選びに対する積極的な姿勢や、自分の将来を真剣に考える力が備わっていました。
その中でも特に印象に残ったのが、「不動産営業をやりたい」と話してくれた一人の生徒のことです。
不動産営業を選んだ理由――価値観を活かした仕事選び
その生徒はこう話してくれました。
「人に何かを教えるのが好きなんです。でも、勉強は嫌いだから学校の先生にはなりたくない。だから、社会に出て専門性を身につけて、それをお客さんに教える仕事がしたい。それで不動産営業がやりたいんです。」
この言葉を聞いて、私は感心しました。まだ高校2年生の彼が、自分の価値観や得意なことを軸にして仕事を考えている姿に驚いたからです。そして、自分に合う仕事として「不動産営業」という選択肢を見つけ、わざわざ私に意見を求めてきたことに本当に驚かされました。さらに宅建を取ることも考えているそうです。
ちなみに不動産営業に特徴的なこととしては、地域密着という点があります。その地域のことがよくわかっていると、良い営業マンになれる可能性が高いんです。
農業が育んだ自己理解
彼がここまで自分を理解し、自分に合った仕事を見つけられた背景には、猪名川甲英高等学院の農業実習がありました。農業では、土を触り、作物を育てる中で「自分にもできる」という成功体験を積み重ねます。この体験が、彼らに自信を与えると同時に、自分の得意なことや価値観に気づくきっかけとなっています。
また、農業には単調な作業や忍耐が必要な場面も多く、自然と自分と向き合う時間が生まれます。その過程で、「自分は何が得意なのか」「どんなときに喜びを感じるのか」を考える機会が増えるのです。彼にとって、「教えることが好き」という価値観を見つけたのも、こうした農業体験の積み重ねから生まれたのかもしれません。
狭い範囲から広い選択肢へ
多くの高校生が、社会経験の少なさから目に見える範囲の選択肢しか考えられない中で、この学校の生徒たちが自分の将来を積極的に考えられるのは、農業という実践的な経験が彼らの視野を広げているからだと思います。「不動産営業がやりたい」と話してくれた生徒も、教えることが好きという自分の価値観を軸に、資格を取りながら専門性を身につけるという具体的な道筋を描いていました。
このように、自分の価値観を活かせる仕事を見つけることができたのは、農業で得た経験や、それをサポートする学校の教育方針があったからだと感じます。
大人の役割――未来を広げる手助けを
猪名川甲英高等学院の理念は『やり直しのきく人生、ダメな人間などいない』。これから就活をする若者には、ダメなところも活かせる、という発想をぜひ持ってほしいと思っています。まだ社会を知らない高校生たちにとって、広い視野で選択肢を考えることは簡単ではありません。だからこそ、私たち大人の役割は、彼らが適性や価値観を見つけ、それを活かせる選択肢を提示し、サポートすることだと思います。
自分の価値観を持っているからでしょう、彼らの顔は他の高校生と比べてもなかなかいい顔をしていました。猪名川甲英高等学院のように、農業や実体験を通じて自己理解を深めさせる教育は、若者の未来を広げるために非常に重要です。そして、そのような場で生徒たちが自分の道を見つける瞬間に立ち会えることは、私たち大人にとっても大きな喜びです。
これからも彼らの可能性を広げるため、全力でサポートしていきたいと思います。彼らが切り拓く未来が、本当に楽しみです!